電気代は市場連動型プランで安くなる?メリットとリスクを徹底解説
電気代は市場連動型プランで安くなる?メリットとリスクを徹底解説
電力会社が提供する料金プランの1つに「市場連動型」があります。電気を使うタイミングをコントロールできれば、電気代は安くなりますが、市場価格の高騰が直接反映される点が難点です。従来のプランとの違いやメリット、注意点を解説します。
目次
電気料金の市場連動型とは何か?
電力の小売全面自由化がスタートして以来、消費者は電力会社やプランを自由に選べるようになりました。「市場連動型」は、新たに誕生した料金プランの1つで、新電力をはじめとする一部の電力会社が提供しています。
電力量料金が市場価格と連動するプラン
市場連動型は、市場価格に応じて電力量料金の単価が変動するプランです。ここでいう市場とは、国内唯一の電力市場である「日本卸電力取引所(JEPX)」を指します。
自社で発電所を有していない一部の電力会社は、消費者に提供する電力をJEPXから調達しています。
市場価格は、需要と供給のバランスに応じて30分ごとに変化するのが特徴です。電気料金の項目のうち、電力量料金にその変動が影響します。
- 電気料金=基本料金(最低料金)+電力量料金+再生可能エネルギー賦課金
厳密にいえば、電力量料金は「(電源料金+固定従量料金) ×電力使用量」で算出され、このうちの「電源料金」が市場価格に連動する仕組みです。
独自燃調が設定されたプランも存在
市場連動型というと、電力量料金の単価が変動するプランを指すのが一般的ですが、広義では「独自燃調が設けられたプラン」も市場連動型に含むケースがあります。
独自燃調とは、燃料の調達コストを価格転嫁するための項目です。大手電力の燃料費調整額に当たるもので、電源調達調整費や燃料費等調整や市場価格調整項と呼ぶ電力会社もあります。
独自燃調がある場合、電力量料金の単価は変動せず、独自燃調の単価が1カ月ごとに変動する仕組みです。なお、本記事では「電力量料金の単価が市場価格に連動するプラン」について解説するものとします。
市場連動型のメリット・デメリット
市場連動型は、電気の使い方をコントロールできれば電気代は安くなりますが、市場価格の高騰の影響をじかに受ける恐れがあります。メリットとデメリットをよく理解した上で選択しましょう。
【メリット】工夫次第で電気代が安くなる
市場連動型では、30分ごとに電力量料金の単価が変動します。市場価格が下落したタイミングで電気を使えば、過度な節電対策をしなくても、今よりも電気代が安くなる可能性が高いでしょう。
一部の電力会社では、市場価格をリアルタイムでチェックできるアプリを用意しています。過去の記録からも、単価の安い時間帯と高い時間帯の予測が可能です。
多くのご家庭で導入されている「従量電灯プラン」は、いつ電気を使っても同じ電気料金が適用されます。電気代を下げたい場合は、節電対策がメインになるでしょう。
【メリット】過去の燃料価格に左右されにくい
一般的な従量電灯プランには、燃料価格の変動を電気料金に反映させる「燃料費調整額」という項目が設けられています。
燃料費調整額は、過去3カ月間の貿易統計価格に基づき算定し、2カ月後の電気代に反映させるルールです。従って、過去の燃料価格の高騰が現在の電気料金に大きな影響を与える可能性があります。
市場連動型は、燃料価格の変動が市場価格に加味されており、燃料費調整額の項目がないケースがほとんどです。過去の燃料価格の影響を受けるリスクが低く、リアルタイムの市場価格が電気代に反映されます。
【デメリット】電気代が急に高くなることがある
デメリットは、市場価格の高騰に伴って電気代が大幅に高くなる可能性がある点です。2020年12月~2021年1月にかけては、スポット市場価格が高騰し、1日平均の最高価格が154.6円/kWhに達した日もありました。
市場価格は以下の要素によって変動します。このため、価格変動を予測できない場合、従量電灯プランよりも高い電気代を支払うことになる可能性があります。
- 燃料価格
- 円相場
- 気象条件
- 電力需要
日本は火力発電の燃料を海外から輸入している割合が高いため、国際情勢や為替の影響を受けやすい状況にあります。また、太陽光発電は天候や季節によって発電量が変動するため、安定した供給が難しいケースもあります。
※出典:スポット市場価格の動向について|電力・ガス取引監視等委員会
市場価格が高くなるタイミングを知ろう
電気代を抑えるには、電力の市場価格が高くなる時間帯を避けて電気を使うことが重要です。価格変動を正確に予測するのは難しいですが、一般的に「高値になるリスクがある」といわれているタイミングを紹介します。
太陽光発電による供給量が減る時間帯
日本国内で発電する再生可能エネルギーのうち、最も割合が大きいのが太陽光発電です。太陽光発電は、太陽の光を電気エネルギーに変換する仕組みで、太陽が出ている間のみ発電ができます。
太陽光発電による供給量が多い日中は市場価格が下がりやすいですが、曇りの日・雨の日・夕方から夜にかけては、市場価格が高くなる場合があるでしょう。
電気代を抑えたい場合は、太陽光発電量が多い昼間に洗濯や掃除を済ませるのがおすすめです。
※出典:国内の2023年度の自然エネルギー電力の割合と導入状況(速報) | ISEP 環境エネルギー政策研究所
日本の発電エネルギーの割合についてもっと詳しく知りたい方はこちら
電力需要が高まる早朝や夕方
電力の市場価格は、需要と供給のバランスで決まります。需要量が供給量を上回った場合は高くなり、需要量が供給量を下回った場合は下落するのが通常です。
1日のうちで、電力の需要量が高くなりやすいのが、早朝や夕方です。午前6~10時は人々が一斉に起床し、学校や会社にいくために支度をします。
午後16~20時は、人々が帰宅して夕食や風呂の準備をするため、電力の消費が一気に増えるでしょう。太陽光発電の供給量が減ることもあり、市場価格はグッと上がります。
電力の需要量が多い時間帯から少ない時間帯に活動を移すことを「ピークシフト」といいます。電力の使用時間を移動・分散させるだけで、全体の電力使用量を変えることなく電気代を抑えられます。
冷暖房機器の利用が増える時期
電力の需要量は、1年を通じて変化します。冷暖房器具の利用が増える夏と冬は、春や秋に比べると市場価格が高くなります。需要が高まる時間帯と重なれば、電力がひっ迫しかねません。
夏は太陽光発電の発電量が多いと思われがちですが、発電量のピークは、気温が25℃以下になる春や秋です。太陽光パネルは高温に弱く、真夏は発電効率が下がる傾向があります。
供給量に余裕がなくなる夏や冬は、政府が節電要請をすることがあります。節電要請が出るタイミングは、電力の市場価格も高いとみてよいでしょう。
季節・世帯人数・地域ごとの電気代についてもっと詳しく知りたい方はこちら
市場連動型の電気代を下げるには?
従量電灯プランに比べ、市場連動型は電気代が大幅に高くなるリスクがあります。無駄な電力消費を抑えるほかに、月々の電気代を下げる方法はあるのでしょうか?
太陽光発電と蓄電池を設置する
家庭用の太陽光発電を導入すれば、電力会社から購入する電気の量を減らせます。太陽光発電で発電した電気を蓄電池に溜め、電気代が高くなりやすい夕方~夜の時間帯に使用すれば、電気代の大幅な節約につながるでしょう。
電気が余った際は、電力会社に一定の価格で買い取ってもらえるのもメリットです。災害にも強く、ライフラインが復旧するまでの数日間を大きな不便なく暮らせます。
ただし、太陽光発電の設置にはまとまった費用がかかります。メンテンナンスも必要となるため、費用の回収期間をよく考慮しなければなりません。屋根の形状や周囲の環境など、設置に適していないご家庭もあります。
電化製品の予約運転やタイマーなどを活用する
一部の電化製品には、節電に役立つ機能が搭載されています。例えば、電力の市場価格が安い時間帯に「予約運転」をセットしておけば、電気代の節約につながります。
近年は、スマートフォンから遠隔操作ができる「スマート家電」が増えています。パナソニックの洗濯機は「LXシリーズ」は、外出先から洗濯開始の遠隔操作ができるため、節電と時短の両立が可能です。
一部のパソコンには「ピークシフト機能」が搭載されている製品があります。電力需要のピーク時間になると、自動的にバッテリー駆動に切り替わるのが特徴で、消費電力を抑えるのに役立ちます。
※出典:LXシリーズ特長:スマホで洗濯 | 洗濯機・衣類乾燥機 | Panasonic
※出典:ピークシフトで日中の電力消費を削減|法人向けビジネスパソコン(PC)
市場連動型は省エネ意識を高める
市場連動型の特徴は、電力量料金の単価が市場価格に応じて変化することです。電気を使うタイミングを意識せざるを得なくなるため、省エネ意識が高まるでしょう。工夫次第では、月々の電気代が今よりも安くなる可能性があります。
一方で、市場連動型はメリットだけでなくリスクもあり、万人に向いているプランとは言えません。「市場価格を常に気にしながら生活するのが難しい」というご家庭には、エネワンでんきがおすすめです。
料金シミュレーションで、現在の電気代と比較してどれだけ安くなるのかを確認してみましょう。