冷房と暖房の電気代はどっちが高い?冷房と除湿の違いや節約方法も解説
冷房と暖房の電気代はどっちが高い?冷房と除湿の違いや節約方法も解説
暑い時期や寒い時期は冷房と暖房を使う時間が長くなるため、電気代も高くなりがちです。これまでの使い方を見直し、気になる点があれば改善することを心がけましょう。冷房と暖房の電気代や節約するコツについて詳しく解説します。
目次
冷房と暖房の電気代はどのくらい?
冷房と暖房の電気代を知りたい場合は、期間消費電力量を用いての計算がおすすめです。具体的な計算方法や、冷房より暖房のほうが電気代が高くなる理由を見ていきましょう。
エアコンの電気代は期間消費電力量で計算可能
期間消費電力量とは、一定期間エアコンを使用した場合の消費電力量の目安です。通常、エアコンは製品ごとに暖房と冷房の期間消費電力量が設定されています。冷房・暖房の記載がない場合は、両方の合計である年間の期間消費電力量です。
期間消費電力量は以下の基準で算出されています。
- 設定温度:冷房27℃、暖房20℃
- 期間:冷房135日(5月23日~10月4日)、暖房160日(11月8日~4月16日)
- 稼働時間:18時間(6~24時)
期間消費電力量を用いた電気代の計算式は次の通りです。
期間消費電力量(kWh)×電力料金単価(円/kWh)=期間を通した電気代の合計
電力料金単価は、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める目安単価の31円/kWh(税込)を使用します。
※出典:期間消費電力量を省エネ性の目安にお選びください|家庭用エアコン|関連製品|一般社団法人 日本冷凍空調工業会
※出典:よくある質問 Q&A カタログなどに載っている電力料金の目安単価とは何ですか?|公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会
期間消費電力量で計算した冷房と暖房の電気代
ダイキンの6畳用エアコン「S224ATES-W」を例にとり、冷房と暖房の電気代を期間消費電力量で計算します。
冷房期間消費電力量:211kWh
暖房期間消費電力量:506kWh
冷房の期間合計の電気代:211kWh×31円/kWh=6,541円
冷房の1日あたりの電気代:6,541円÷135日=約48.45円
暖房の期間合計の電気代:506kWh×31円/kWh=15,686円
暖房の1日あたりの電気代:15,686円÷160日=約98.04円
基準期間の合計電気代:6,541円+15,686円=約22,227円
※出典:Eシリーズ 仕様(スペック) | 壁掛形エアコン | ダイキン工業株式会社
冷房と暖房の電気代に差が出る理由
冷房と暖房の電気代を比較すると、暖房のほうが冷房より高くなります。設定温度と外気温に差があるほど、エアコンの消費電力量が増えるためです。
例えば、次のような状況を比較してみましょう。
外気温32℃、冷房の設定温度28℃:温度差4℃
外気温5℃、暖房の設定温度20℃:温度差15℃
あくまでも一例ですが、夏より冬のほうが、設定温度と外気温の差が大きくなる傾向があります。 エアコンが最も電力を消費するのは、運転開始から設定温度に達するまでの間です。設定温度と外気温の差が大きいほど、設定温度に達するまでの時間が長くなるため、電力使用量が増え、電気代も高くなります。
冷房と除湿の電気代の違い
湿気が多く蒸し暑い時期には、エアコンの冷房機能ではなく除湿機能を使っている方も多いのではないでしょうか。冷房と除湿で電気代がどのように変わるのかを見ていきましょう。
エアコンの除湿機能の種類
冷房除湿:温度変化が少なく、除湿量は冷房より控えめです。室温を大きく下げずに湿度を抑えられるため、比較的電気代が安くなることが多いです。
再熱除湿:冷気を再度温め直してから吹き出すため、室温はほとんど変わりませんが、除湿効果は高めです。そのため、除湿量を重視したいときや、室温を下げたくない場合に適しています。ただし、消費電力が高くなる傾向があります。
環境や使用状況によって電気代は異なるものの、一般的には再熱除湿が最も消費電力が高くなりやすく、冷房がその次、冷房除湿が比較的安く済むケースが多いです。ただし、エアコンの機種や設定、外気温の状況によっても電気代は変動するため、あくまでも目安と考えてください。
目的に合わせた使い分けが大切
冷房と除湿は電気代に差が生じやすいため、目的や環境に応じて使い分けることが大切です。電気代を重視しすぎると快適さを損なうこともあるため、以下の各モードの特徴を理解し、適切に選びましょう。
おすすめの利用シーンを以下にまとめました。
冷房:温度と湿度を同時に大きく下げたい場合。特に暑い夏場や短時間で涼しくしたいときに効果的です。
冷房除湿:軽く除湿したい場合や、エアコンの電気代を抑えたいときに便利です。長時間使用しても省エネ効果が期待できます。
再熱除湿:梅雨の時期や、室温を変えずに湿度を下げたい場合におすすめです。温度を保ちながら快適な湿度を維持できるため、体感温度をコントロールしやすくなります。
どのモードを使用するかは、部屋の広さ、外気温、湿度の高さなど、各家庭の条件によっても変わるため、いくつかのモードを試して最適な使い方を見つけてください。
冷房の電気代を節約するコツ
エアコンの冷房と暖房は、使い方を見直すことで節約につながります。まずは、冷房の電気代を抑える方法について解説します。
室温28℃を目安にする
環境省は過度な冷房に頼らないライフスタイル「COOLBIZ(クールビズ)」を推奨しています。クールビズでの推奨室温は28℃です。
ただし、28℃にこだわりすぎる必要はありません。室温を下げすぎないように注意しながら、無理のない範囲の温度設定で過ごしましょう。冷房の設定温度を1℃上げると、約13%の消費電力量の削減を期待できます。
また、上着やネクタイを外して過ごすと体感温度が2℃下がるという実験結果もあります。着衣量の調整により体感温度を下げる工夫も大切です。
※出典:適正な室温とは/COOLBIZ|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。
※出典:エアコンの使い方について | 家庭部門のCO2排出実態統計調査
室内に直射日光が入らないようにする
窓から室内に直射日光が差し込むと、室温が下がりにくくなり、冷房効果が悪くなってしまいます。冷房の電気代を節約したいなら、窓からの直射日光を遮ることが重要です。
窓に遮熱フィルムを貼ったり、遮熱効果のあるカーテンに変えたりすれば、窓から直射日光が入りにくくなります。窓ガラスを遮熱効果があるものに交換するのもおすすめです。
窓の外側にも対策を講じれば、遮熱効果がより高まるでしょう。すだれやよしずを使う方法や、つる性の植物を植えてグリーンカーテンをつくる方法などがあります。
暖房の電気代を節約するコツ
暖房の電気代を抑えたい場合、どのような方法が有効なのでしょうか。実践しやすい節約術をご紹介します。
室温20℃を目安にする
暖房に頼りすぎない過ごし方として環境省が推奨しているのが「WARMBIZ(ウォームビズ)」です。ウォームビズでは、冬の推奨室温を20℃としています。
寒い時期は暖房の設定温度を上げてしまいがちになりますが、電気代を抑えたいならできるだけ温度を下げて過ごすようにしましょう。暖房の設定温度を1℃下げることで、約10%の消費電力量を削減できます。
衣食住の工夫で冬を快適に過ごす生活を目指すことが、ウォームビズのポイントです。例えば、食材にこだわった鍋料理を囲めば、室内だけでなく体も温まりやすくなるでしょう。
※出典:エアコンの使い方について | 家庭部門のCO2排出実態統計調査
ほかの電化製品と併用する
エアコンをほかの電化製品と一緒に使うことで、より効率良く室内を暖められます。例えば、電気ストーブなど速暖性に優れた暖房器具を併用すれば、エアコンで部屋全体が暖まるまでの間に暖を取ることができます。
また、暖気は上にたまりやすい傾向があるため、下側を暖められるこたつや電気カーペットとの併用もおすすめです。いずれも電気代がそれほど高くないことから、快適さを損なわずに電気代の節約を実現できるでしょう。
エアコンは温風により空気が乾燥しやすいデメリットがあります。空気の乾燥は肌トラブルや体調不良につながる恐れがあるため、気になる場合は加湿器を併用することをおすすめします。
エアコンの電気代を節約するコツ
冷房と暖房に共通した電気代の節約方法をご紹介します。以下に挙げるポイントを意識しながらエアコンを使えば、節約効果をより高められるでしょう。
自動運転機能を活用する
冷房と暖房の節約を図る際に活用したい機能が自動運転機能です。室内の状態に合わせて適切な設定を選択してくれるため、手動で設定するより節約効果が高まります。
自動運転機能の使用中に、風量が強風になることがあります。できるだけ早く設定温度に達するよう、エアコンが自動で強風を選択しているためです。
手動で風量を調節する場合、微弱や弱風を選択すると設定温度に達するまでの時間がかかってしまい、余計な電力を消費しかねません。自分で小まめに調整するより、エアコンの自動運転に任せたほうが経済的です。
サーキュレーターで室内の空気を動かす
暖気は上のほうに、冷気は下のほうにたまる性質があります。エアコンの風だけで室内の空気が動きにくい場合は、部屋全体の冷暖房効果がなかなか上がりません。
室温を均一に保つためにも、サーキュレーターを活用しましょう。暖気や冷気が溜まりやすい場所にサーキュレーターの風を当てれば、部屋全体に拡散しやすくなります。
サーキュレーターがない場合は、扇風機を代用することも可能です。体に風が当たると体感温度が下がりやすくなるため、夏場は冷房と扇風機をうまく併用するとよいでしょう。
フィルターを掃除する
エアコンは室内から取り込んだ空気を冷風や温風に変えており、その際にフィルターを通して空気中のホコリやゴミを取り除いています。
フィルターがホコリやゴミで目詰まりすると、冷暖房効率が低下し、電気代が高くなってしまいます。2週間に1回を目安にフィルターを掃除しましょう。
エアコン本体からフィルターを取り出す前に、掃除機でホコリやゴミを吸い取れば、取り出す際に部屋が汚れにくくなります。水気が残ったフィルターをそのまま戻すと、エアコンの内部にカビが発生しやすくなるため、水洗い後はしっかりと乾燥させましょう。
室外機の周囲をきれいにする
室外機の周辺に物が置いてある場合は、きれいに片付けましょう。物が邪魔をしていると熱交換がうまく行われず、冷暖房の効きが悪くなります。
室外機自体をきれいに掃除することも重要です。屋外にある室外機は汚れがたまりやすいため、本体の状態を小まめにチェックしましょう。
室外機に直射日光が当たったり雪が積もったりすることでも、冷暖房効果が下がる恐れがあります。専用のカバーを取り付けて、室外機を保護しましょう。
電力会社を見直す
電力小売自由化により、現在は自由に電力会社を変更することが可能です。新電力と呼ばれる新規参入業者が、さまざまなサービスやプランを提供しています。
電気代が高くなる理由の1つに、そもそも電力会社が設定している電気料金が高いこともあります。電気料金が今より安い電力会社に変えられれば、それだけで電気代が安くなる可能性もあるのです。
エネワンでんきでは、ご家庭の電気の使い方に合わせて適切なプランを選べます。さまざまな特典のついたプランも用意しているため、電力会社の切り替えを検討しているなら、ぜひエネワンでんきをご検討ください。
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冷房と暖房の電気代に関する疑問
エアコンの電気代について、よくある疑問とその回答をご紹介します。冷房と暖房の電気代を考える際に気になることがあればチェックしてみましょう。
つけっぱなしは電気代が高くなる?
エアコンをつけっぱなしにする場合、長時間稼働による電気代はかかりますが、一定の室温をキープしやすくなります。
一方、小まめにオンオフする場合は、オフにした後に室温が変化します。再度オンにしたときに、設定温度に達するまでの電気代が高くなることがポイントです。
例えば冷房の場合、外気温が35℃以上であれば、オフにした後の温度変化が大きいため、外出中もつけっぱなしにしておくほうが効果的です。気温がそれほど高くない場合は、小まめにオンオフするとよいでしょう。
また、1時間以上外出するなら、外気温にかかわらず電源を切るのがおすすめです。
エアコンのつけっぱなしについてもっと詳しく知りたい方はこちら
エアコンのカタログにある「APF」とは?
APF(通年エネルギー消費効率)とは、1年間を通じて、一定条件でエアコンを運転したときの消費電力1kWあたりの冷暖房能力を表した数値です。
以下の式で算出されます。
1年間で必要な冷暖房能力の総和(kWh)÷期間消費電力量(kWh)
1年間で必要な冷暖房能力の総和は、エアコンの標準能力に応じて決まっています。例えば、定格冷房能力が2.2kWの場合、1年間で必要な冷暖房能力の総和は4,161kWhです。
このAFPの値が高いほど、エアコンの省エネ性能が優れていることになります。では、どの程度のAPFが高いとされるのでしょうか?
APF 7.0以上:2023年時点でトップレベルの省エネ性能を持つ機種です。電気代を大幅に抑えたい方に向いていますが、初期費用が高くなりやすい点に注意が必要です。
APF 6.6前後:上位機種の水準です。性能とコストのバランスが取れており、省エネ効果も期待できます。
APF 5.8前後:標準的な省エネ性能です。多くの家庭用エアコンがこのレベルにあり、電気代をそれなりに抑えたい方に向いています。
APF 5.0未満:比較的古い機種や、初期費用が安価な機種が該当します。現在の省エネ基準から見ると性能が低いため、電気代がかさみやすい傾向があります。電気代が高く感じる場合は、買い替えを検討するのも一つの選択肢です。
最近では、電気代の高騰もあり、省エネ性能の高いエアコンが注目されています
エアコンを購入する際は、APFが高い製品を選ぶことで、長期的に見てランニングコストを抑えられる可能性があるため、初期費用とのバランスを考慮して選ぶことが大切です。
※出典:省エネ性能カタログ 2023年版 P18 | 経済産業省
200Vエアコンは100Vより電気代が高い?
200Vエアコンは、100Vエアコンに比べて出力が高く、スピーディーに冷暖房効果を発揮できるため、広い部屋や適用畳数の多いタイプで多く採用されています。
ただし、電圧の違いが電気代に直接影響するわけではないという点に注意が必要です。電気代は消費電力によって決まるため、同じ消費電力であれば200Vでも100Vでも基本的な電気代は変わりません。
たとえば、1,000W(1kW)のエアコンを1時間使用する場合、100Vでも200Vでも消費するエネルギー量(1kWh)は同じです。そのため、電圧の違いによって電気代が増えるわけではありません。
一方で、200Vエアコンは100Vエアコンに比べて「パワー」が強いため、同じ機能を持つ製品であっても、200Vのほうが短時間で冷暖房効果を発揮できる点がメリットです。簡単に言えば、同じ冷暖房能力を発揮するための時間が短縮されるため、効率的な運転が可能となります。また、200Vエアコンを設置する際には、200V専用のコンセントが必要です。100V用のコンセントしかない場合は、新たに専用コンセントを設置する必要があり、設置費用が追加でかかる点も考慮しましょう。
冷房と暖房の電気代を節約しよう
冷房と暖房の電気代は、カタログに記載されている期間消費電力量を参考にして算出できますが、基本的には暖房のほうが冷房よりも電気代が高くなりやすい傾向があります。そのため、電気代の負担を抑えるには、エアコンの使い方を工夫することが重要です。
今回ご紹介したように、冷房と暖房の運転モードの特性を理解し、目的や環境に合わせた設定温度や使用時間を見直すことが節約の第一歩です。また、サーキュレーターや加湿器などの補助機器を併用することで効率を上げたり、定期的にフィルターや室外機を掃除してエアコンの性能を維持することも効果的です。
さらに、電力会社のプランを見直したり、省エネ性能の高いエアコンに買い替えることも長期的な節約につながります。特に最近の電気代高騰を考慮すると、APF(通年エネルギー消費効率)を基準にした省エネ性能の高いエアコンへの買い替えは、効果的な選択肢といえるでしょう。冷房・暖房ともにエアコンを使用する時間は年間を通じて長くなるため、こうした日々の小さな工夫や機器の見直しが、年間の電気代削減に大きな影響を与える可能性があります。エアコンの使い方を見直し、無理のない節約を心がけながら、快適で経済的な生活を実現していきましょう。