オゾン層破壊による影響とは?保護のために個人ができることも紹介

オゾン層破壊による影響とは?保護のために個人ができることも紹介

オゾン層破壊による影響とは?保護のために個人ができることも紹介

環境破壊は少なからず人々の生活に影を落とします。今回はオゾン層破壊による影響を解説します。併せてオゾン層を保護するために個人ができることも紹介するので、オゾン層破壊の問題を自分事として捉えられるようになりましょう。

目次

1.オゾン層の基礎知識

 1-1.オゾン層とは紫外線を吸収してくれる気体の層

 1-2.オゾン層破壊の原因は「フロン」

 1-3.オゾン層は回復傾向にある

2.オゾン層破壊による影響

 2-1.皮膚がんや白内障の増加

 2-2.生態系の変化

 2-3.世界遺産や文化財の損傷が進む

  2-3-1.地球温暖化への影響はほとんどない

3.オゾン層保護への日本の取り組み

 3-1.オゾン層保護法

 3-2.フロン回収・破壊法

4.オゾン層保護のために個人ができること

 4-1.ノンフロン製品を選ぶ

 4-2.フロン製品の回収に協力する

5.できることから始めてオゾン層破壊を食い止めよう

オゾン層の基礎知識

オゾン層破壊の影響を説明する前に、そもそもオゾン層とは何なのかを解説します。オゾン層の定義や役割を知れば、破壊によって引き起こされる影響をよりイメージしやすくなるはずです。

オゾン層とは紫外線を吸収してくれる気体の層

オゾン層とは、地上から20~30km上空にある「オゾン」で構成された層のことです。オゾン層を形作るオゾンとは、酸素原子が3つ結びついた物質を指します。オゾン層だけでなく、地球の大気中にもごく微量ながら存在しています。

オゾン層の役割は、地球に降り注ぐ紫外線の中に含まれる有害な光線を吸収し、地表に届かないようにすることです。何十億年も前にオゾン層が生まれたことで、地球上の環境が生き物が暮らしやすい状態へと整い、海の生き物が陸に進出したといわれています。つまりオゾン層は、生き物が生きていくために欠かせない存在といえるのです。

オゾン層破壊の原因は「フロン」

オゾン層を構成するオゾンは、「フロン」の作用によって破壊されることがわかっています。

フロンとは、代表的なものに「クロロフルオロカーボン(CFC)」「ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)」などがある「フッ素と炭素の化合物」の総称です。エアコンや冷蔵庫などの「冷媒(=空気中の熱を運ぶガス)」として使用されている物質です。

空気中に放出されたフロンは、10~20年かけて成層圏のオゾン層まで到達するとされています。フロンが強い紫外線を浴びると塩素が発生し、その塩素がオゾンから酸素原子を1つ奪うことで、オゾンを酸素に変えてしまいます。このようなメカニズムでフロンはオゾンをどんどん酸素に変え、オゾン層を破壊していくのです。

オゾン層は回復傾向にある

オゾン層の破壊は、1980年代から1990年代半ばにかけて深刻化した問題です。オゾン層破壊による影響を重く見た世界各国は、フロン規制を世界中に広めるため、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」(1985年締結)や「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(1987年締結)を取り交わしました。

これらの規制が功を奏し、成層圏に存在するオゾン層破壊物質の量は、1990年代半ばをピークに減少しています。つまりオゾン層は回復傾向にあるといえるのです。

それでもなお、オゾン層が破壊される以前の状態に戻るのは、南極で2066年頃、北極で2045年頃と予測されています。

※出典:オゾン層保護の取り組みとオゾン層の今後の見通し | 気象庁

オゾン層破壊による影響

オゾン層が破壊されると、オゾン層に吸収されるはずだった紫外線が地表に届くことになります。中でも影響が強く懸念されているのが、生き物に多大な影響を与えるといわれている「UV-B」が地表に届くことです。オゾン層の破壊によって起こる影響を解説します。

皮膚がんや白内障の増加

オゾン層の破壊によって地表に届く線量が増えるといわれているUV-Bは、紫外線の中でも特に強いエネルギーを持つ光線です。UV-Bを大量に浴びると、人体にさまざまな影響が現れるといわれています。

UV-B増加による影響の1つが、がんです。UV-Bを浴びることによって細胞内のDNAが繰り返し傷つけられると、遺伝子に突然変異が起き、がん化を引き起こす可能性があります。

特に懸念されているのが皮膚がんの増加です。過度の日焼けによってリスクが高まる皮膚がんは、オゾン層の破壊に伴ってUV-Bが増えると、より危険度が高まるとされています。

UV-Bの増加は目の健康にも悪影響を及ぼす問題です。UV-Bが目の中に入ると、目に異物が入らないようにする役割を持つ角膜を傷つけます。それと同時に、白内障のリスクも高めるといわれています。

生態系の変化

生き物の成長を妨げる可能性がある点も、オゾン層の破壊によってもたらされる影響の1つです。結果的に生態系の構造や機能を変えてしまう恐れがあるといわれています。

オゾン層破壊によって地球に降り注ぐUV-Bの量が増えると、海洋プランクトンに深刻な影響を及ぼすといわれています。海洋プランクトンとは、海中を漂いながら生活している小さな生き物の総称です。光合成を行う「植物プランクトン」と植物プランクトンを食べる「動物プランクトン」とに分けられ、海の食物連鎖を支えています。

UV-Bの増加により、植物プランクトンや動物プランクトンなどの成長が抑制されたり孵化率が低下したりすることで、海の中のプランクトンのバランスが崩れ、海の生態系が変わってしまうのです。

世界遺産や文化財の損傷が進む

紫外線の増加は、地球上で生活する生き物のみならず、建物やモノにも悪影響をもたらすとされています。特に問題視されているのが、世界遺産や文化財の損傷です。

世界遺産や文化財に用いられている木材や羊毛などの天然素材は、UV-Bを照射されると「光劣化」を起こします。光劣化とは、紫外線が持つ破壊力によって、変色や強度の低下が起こる現象を指します。

オゾン層破壊によって地表に届くUV-Bの量が増えれば、世界遺産や文化財の光劣化が加速度的に進む可能性があるのです。

地球温暖化への影響はほとんどない

「オゾン層が破壊されて地表に届く紫外線の量が増える」と聞くと、「太陽のエネルギーで地球が暖められて地球温暖化につながるのでは?」とイメージする方もいるでしょう。しかし、このイメージは誤解に過ぎません。実際には、オゾン層破壊と地球温暖化は関連性が薄いとされています。

オゾン層が破壊され、地表に届く太陽エネルギーの量が増加したとしても、増加量はごくごくわずかであると指摘されています。二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスによる影響と比べれば、その影響は無視できるレベルなのです。

ただし、フロンも温室効果ガスの1つです。フロンの放出は地球温暖化に拍車をかけるため、注意する必要があるといえるでしょう。

オゾン層保護への日本の取り組み

オゾン層保護への世界的な取り組みを受け、日本でも法整備が進められました。オゾン層を保護するために実施されている日本の取り組みを紹介します。

オゾン層保護法

オゾン層保護法とは、正式名称を「特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」という法律のことです。ウィーン条約とモントリオール議定書の締結を受け、日本国内で制定されたオゾン層保護のための法律として知られています。

オゾン層保護法では、オゾン層を破壊する物質(=特定物質)の製造や輸入を規制するとともに、特定物質の排出抑制や使用合理化指針の作成などを規定しています。

オゾン層保護法が定義する「特定物質」に該当するフロン類は、「クロロフルオロカーボン」「トリクロロエタン」「ハイドロクロロフルオロカーボン」などです。

出典:特定物質等の規制等によるオゾン層の保護に関する法律|e-Gov 法令検索

フロン回収・破壊法

フロン回収・破壊法とは、正式名称を「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律」という法律のことです。フロンを大気中に放出しないよう、フロンが使われている製品を廃棄する際に、フロンを適切に回収・破壊することを義務付ける法律を指します。

オゾン層保護法でフロン類の製造や輸入を規制したとしても、すでにフロンを使用した製品は世の中に出回っていました。フロンの放出量を減らすには、フロンが使われた製品を廃棄する際、フロンが大気中に放出されるのを防ぐルール(=フロン回収・破壊法)が必要だったのです。

フロン回収・破壊法で規制の対象となるフロン類は、「クロロフルオロカーボン」「ハイドロクロロフルオロカーボン」「ハイドロフルオロカーボン」の3種類です。

出典:特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律(フロン回収破壊法)の概要

オゾン層保護のために個人ができること

オゾン層を保護するためには、地球上で生活する一人ひとりがオゾン層保護を意識して行動する必要があります。オゾン層を守るためにできる取り組みを紹介します。

ノンフロン製品を選ぶ

電化製品を廃棄する際に放出されるフロンを減らすには、もともとフロンが使われていない製品(=ノンフロン製品)を購入するのが、最も確実な方法です。ノンフロン製品を選べば、廃棄する際にフロンの放出を気にする必要がなくなります。

ノンフロン製品では、フロンの代わりに、オゾン層に悪影響を与えないとされている「アンモニア」「イソブタン」「炭酸ガス」などを用いているものが一般的です。

ノンフロン製品を選びたい電化製品の代表例が冷蔵庫です。冷蔵庫についてはフロンを使用していない製品が販売されているため、ノンフロン製品も選択肢の1つになり得ます。

フロン製品の回収に協力する

フロンが使われている製品をすでに持っていて、その製品を廃棄する場合には、適切な方法で処分する必要があります。不適切な方法でフロン製品を処分すると、フロンを回収できずに大気中に放出してしまう可能性があるためです。

冷蔵庫やエアコンなどフロンが使われている製品を廃棄する際は、「家電リサイクル法」に従って処分する必要があります。家電リサイクル法の対象となる製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)を処分するときの流れは以下の通りです。

1.廃棄する製品を購入した店舗、もしくは新しい製品を購入する予定の店舗に製品の引き取りを依頼する
2.「リサイクル料」と「収集運搬料金」を支払う。リサイクル料は処分する製品のメーカーごとに、収集運搬料金は引き取りを依頼する店舗によって異なる
3.「家電リサイクル券」に必要事項を記入し、家電リサイクル券の控えを受け取る

家電リサイクル券の控えは、処分した製品のリサイクル状況を家電リサイクル券センターのホームページで確認するときに使用します。

できることから始めてオゾン層破壊を食い止めよう

オゾン層は、紫外線から地球を守る役割を持つ気体の層です。オゾン層の破壊が進むと、地球上で暮らす生き物の健康や生態系に影響を及ぼすだけでなく、世界遺産や文化財にも深刻な影響を与えます。

オゾン層は、国際的な取り組みによって回復傾向にあるものの、完全に回復するまでにはまだまだ時間がかかるといわれています。オゾン層を元の状態に戻すためには、ノンフロン製品を選んだりフロン製品を正しく処分したりするなど、個人でできる小さな行動が大切です。一人ひとりの意識と行動が未来の環境保護につながるのです。

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    エネワンでんき編集部

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