
エアコンのドライ(除湿)機能とは?電気代や冷房と上手な使い分け
エアコンのドライ(除湿)機能とは?電気代や冷房と上手な使い分け
エアコンには「ドライ」と呼ばれる機能が備わっていますが、その上手な使い方がわからないという方も多いのではないでしょうか。エアコンのドライ機能の特徴や冷房・送風との違い、ドライを使うのがおすすめなケースをご紹介します。
目次
エアコンのドライ(除湿)機能とは?

機種によっては「除湿」という機能名になっていることからもわかるように、エアコンのドライ機能は室内の湿度を下げるための機能です。温度を下げる冷房機能との違いや、送風機能との違いもあわせて解説します。
エアコンのドライと冷房の違い
エアコンの冷房は、室温を下げることに特化した機能です。室内機で取り込んだ空気の熱を室外機の熱交換器で奪い、温度が下がった空気を再び室内に送り込んで室内を涼しくします。
一方のドライは、室内の湿度を下げることに特化した機能です。飽和水蒸気量の性質を利用して室内の湿度を下げています。空気を冷却し飽和水蒸気量を下げることで、空気中に含みきれなくなった水分が水となり、ドレンホースで排出される仕組みです。
水分量が減った空気を室内に戻せば、室内全体の空気の水分量が減って湿度が下がります。これを繰り返すことで室内の湿度を徐々に下げていく機能がドライです。
冷房とドライのいずれもエアコンに取り込んだ空気を冷やすため、基本的にドライ運転時は湿度だけでなく温度も下がります。
エアコンのドライと送風の違い
エアコンの機能でわかりにくいものとしては、ドライ以外に送風も挙げられます。エアコンの送風機能とは、室内の空気を循環させるための機能です。
そもそもエアコンの冷房と暖房の運転時にも、室内の空気を循環させています。室内機で取り込んだ空気の熱を熱交換器で調整し、冷風や温風にして室内に戻しているのです。
送風運転時も空気の流れは同じですが、熱交換器が作動しないため空気の温度は変わりません。室内の空気を取り込み、再び戻すだけの運転になります。
送風は冷暖房に比べて電気代を大幅に節約できるため、冷暖房と併用すれば電気代を抑えながら室内を快適な状態にできます。室内の換気やエアコン内部のカビ予防に役立てることも可能です。
エアコンのドライには3種類ある

エアコンのドライ機能には、冷房除湿・再熱除湿・ハイブリッド除湿の3種類があり、どの除湿タイプになっているかは機種により異なります。それぞれに特徴があるため、違いを理解したうえで使うことが重要です。
冷房除湿
冷房除湿とは、温度を下げすぎずに湿度を下げる機能です。リモコンに「ドライ」や「除湿」とだけ表示がある場合は、大半が冷房除湿になっています。
冷房除湿の特徴は、冷房より温度変化が少なく除湿量が多いことです。冷房でもある程度の除湿効果はありますが、冷房除湿なら除湿効果がより高まります。冷房除湿でも温度は下がるため、弱い冷房として使うのもおすすめです。
また、冷房除湿は冷房より電気代が安いことも特徴として挙げられます。長時間のエアコン運転でも省エネになるため、少し涼しくしたいだけの状況で使いやすいでしょう。
再熱除湿
室温を下げずに湿度を下げる機能が再熱除湿です。日立の「カラッと除湿」やダイキンの「さらら除湿」など、メーカー独自の除湿機能に多く見られます。
再熱除湿で温度がほとんど下がらないのは、冷却して湿度を下げた空気を、再度ヒーターなどで加熱してから室内に戻しているためです。冷房除湿より除湿量が多いため、とにかく湿度を下げたい場合に向いています。
ただし、再熱除湿の電気代は、冷えた空気を再加熱する工程が加わるため、一般的に冷房よりも高くなります。長時間の運転には適しておらず、部屋の温度を下げずに素早く除湿したいときのみ使うのがよいでしょう。
ハイブリッド除湿
エアコンの一部の機種には、ハイブリッド除湿という機能が搭載されています。除湿した空気に室内の空気を混ぜて吹き出すため、室温にできるだけ近づけて除湿することが可能です。
再熱除湿のように温度を上げるための電力を消費しないことから、電気代を抑えられる点もメリットです。冷房より肌寒さを感じにくく省エネにもつながる、バランスの取れた除湿タイプだといえます。
ハイブリッド除湿機能が搭載されているエアコンは価格が高めですが、節電を意識しつつ機能面も重視したい場合、製品選びで迷った場合は、ハイブリッド除湿機能を搭載したエアコンを選ぶとよいでしょう。
電気代はどの除湿タイプが高い?
除湿タイプや冷房を消費電力で比較した場合、「再熱除湿>冷房>弱冷房除湿≒ハイブリッド除湿」となります。高価格帯のエアコンに搭載されているハイブリッド除湿なら節電になりますが、一般的なエアコンに搭載されている再熱除湿では節電にならないといえます。
ただし、冷房とドライは使用目的が異なるため、電気代の比較にはあまり意味がありません。ドライはあくまでも快適さを求める機能であり、温度を下げる冷房と湿度を下げるドライを状況に応じて使い分けることが大切です。
エアコンの電気代が気になる場合は、自動運転機能を活用するのがおすすめです。エアコンは電源を入れてから設定温度に達するまでの間に最も電力を消費しますが、自動運転なら最短で設定温度に達するため、電気代の節約につながりやすくなります。
ドライと冷房を電気代で比較

エアコンのドライと冷房では、電気代にどのような違いが見られるのでしょうか。実際の製品を例に取り、ドライと冷房を電気代で比較しました。
なお、電化製品の電気代は、「消費電力量(kWh)×電力量料金(円/kWh)」の計算式で求められます。
電気代の目安を知りたい場合は、全国家庭電気製品公正取引協議会が定める31円/kWhを電力量料金として使うのが一般的です。また、1日あたりの使用時間は8時間として計算します。
※出典:よくある質問 Q&A |公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会
エアコンのドライの電気代
ダイキンのエアコン「S405ATRS」でドライ運転をした場合の電気代は次の通りです。
ドライの1時間あたりの消費電力量:239Wh(運転安定時)
1時間あたりの電気代:0.239kWh×31円/kWh=約7.4円/時間
1日あたりの電気代:7.4円/時間×8時間=約59.2円/日
1カ月あたりの電気代:59.2円/日×30日=約1,776円/月
なお、当製品の「さらら除湿」は、ダイキン独自のハイブリッド除湿に相当します。
※出典:RXシリーズ 「うるさらX」 快適・節電 | 壁掛形エアコン | ダイキン工業株式会社
エアコンの冷房の電気代
前項と同じ「S405ATRS」を冷房運転した場合の電気代も見てみましょう。
冷房の1時間あたりの消費電力量:237Wh(運転安定時)
1時間あたりの電気代:0.237kWh×31円/kWh=約7.3円/時間
1日あたりの電気代:7.3円/時間×8時間=約58.4円/日
1カ月あたりの電気代:58.4円/日×30日=約1,752円/月
運転安定時はハイブリッド除湿と冷房の電気代がほぼ同じであることがわかります。
※出典:RXシリーズ 「うるさらX」 快適・節電 | 壁掛形エアコン | ダイキン工業株式会社
エアコンのドライがおすすめなケース

エアコンのドライ機能は、湿度が高いときや洗濯物を部屋干ししたいときに活用するのがおすすめです。それぞれの具体的な内容を詳しく見ていきましょう。
湿度が高いとき
温度より湿度を下げることを優先させたい場合は、ドライ機能を使いましょう。冷房でも除湿は可能ですが、ドライなら冷房以上に湿度が下がります。
東京都が策定した「健康・快適居住環境の指針」によると、快適に過ごせる湿度の目安は40〜60%とされています。湿度は体感温度に影響するため、梅雨時期などジメジメして不快なときはドライを活用しましょう。
なお、機種によっては節電しながら自動運転で湿度を下げ、室内を快適にしてくれるものもあります。
※出典:健康・快適居住環境の指針|室内環境保健対策|東京都保健医療局
洗濯物を部屋干ししたいとき
エアコンのドライ機能は、洗濯物を部屋干ししたいときにも有効です。湿度が高いと洗濯物が室内で乾きにくくなりますが、ドライを活用すれば早く乾きます。
サーキュレーターがある場合は、ドライ機能と併用するのもおすすめです。サーキュレーターにより空気が循環するため、除湿効果をより高められます。
サーキュレーターで洗濯物を乾かす際は、風を洗濯物に直接当てましょう。洗濯物の湿気が分散しやすくなり、より早く乾かせます。急いで乾かしたい場合は、洗濯物の真下にサーキュレーターを置き、真上に風を送るのがおすすめです。
エアコンのドライを使う際の注意点

エアコンのドライ機能は室内を除湿できる便利な機能ですが、エアコンの内部にカビが発生しやすくなります。カビを抑えるためのポイントを理解し、エアコンを清潔に使いましょう。
エアコン内部にカビが発生しやすくなる
エアコンのドライ運転時には、空気中の水分が水滴となって出てくるため、カビが繁殖しやすくなります。カビは温度が20~30℃の環境で急速に増殖する上、ホコリや汚れをエサにすることから、エアコン内部はカビにとって絶好の環境なのです。
エアコンのドライを使っていると、内部が常に濡れた状態になり、どうしてもカビが発生しやすくなります。ドライを頻繁に使うご家庭では、エアコン内部のカビ対策をすることが重要です。
エアコン内部のカビを抑制する方法
エアコン内部のカビの繁殖を抑えるための方法をまとめました。
- ドライや冷房の使用後は、エアコンの「内部クリーン」機能や送風機能を活用して内部を乾燥させる
- エアコンのフィルターをこまめに掃除する(カビのエサを減らせる)
- 室内を定期的に換気する(汚れた空気をきれいな空気に入れ替えられる)
エアコン内部のカビを抑制するためには、できるだけ空気を乾燥させることや、カビの栄養源となるホコリや汚れを減らすことがポイントです。
エアコンのドライと冷房を上手に使い分けよう

ドライと冷房を消費電力で比較した場合、「再熱除湿>冷房>弱冷房除湿≒ハイブリッド除湿」となります。ただし、冷房運転とドライ運転は使用目的が異なるほか、使用環境や設定温度によって電気代も異なるため、どれが安くなるとはいえません。
湿度を下げたい場合はドライ運転、温度を下げたい場合は冷房運転と使い分けるのが効果的です。ドライは「温度を下げたくないが、湿度は下げたい」というときに活用できる、快適さを重視した機能です。