原子力発電のメリットとデメリット。再稼働の必要性や代替エネルギーについても解説

原子力発電のメリットとデメリット。再稼働の必要性や代替エネルギーについても解説

原子力発電のメリットとデメリット。再稼働の必要性や代替エネルギーについても解説

原子力発電は安定した電力供給と低いCO2排出量が魅力ですが、事故時の被害や使用済み燃料の処分が課題です。本記事では、原子力発電の仕組みや歴史、メリット・デメリットを解説し、再生可能エネルギーの種類とその活用方法についても紹介します。それぞれ賛否両論があるテーマですが、一緒に考えてみましょう。

目次

1.原子力発電の仕組み

 1-1.発電の仕組み

 1-2.原子力発電の歴史

2.原子力発電のメリット

 2-1.燃料が少なく発電できる

 2-2.安定的な電力供給が可能

 2-3.二酸化炭素の排出量が少ない

3.原子力発電のデメリット

 3-1.事故発生時の被害が大きい

 3-2.使用済み燃料の処分方法が困難

 3-3.初期投資・維持に莫大な金額が必要

4.各国の原子力発電に対する方針

 4-1.日本の方針

 4-2.世界各国の方針

5.原子力発電所の再稼働はいつになる?

 5-1.2024年の再稼働予定の原子力発電所

 5-2.今後の再稼働の方向性

6.エネルギー安定供給の一翼を担うクリーンなエネルギー

 6-1.再生エネルギーを活用するメリット

  6-2-1.再生エネルギーの種類と特徴

  6-2-2.太陽光発電

  6-2-3.水力発電

  6-2-4.風力発電

  6-2-5.バイオマス発電

  6-2-6.地熱発電

 6-3.再生エネルギーの課題

7.環境と安全のためにできることを始めよう

原子力発電の仕組み

世界では再生エネルギーに注目が集まる一方、安定的なエネルギー供給の観点から、原子力発電を活用している国も多くあります。原子力発電について詳しく理解するためにも、まずはその仕組みや歴史について理解を深めましょう。

発電の仕組み

原子力発電は、ウランという物質の核分裂によって発生する膨大な熱エネルギーを利用して電力をつくる方法です。

具体的な発電プロセスは次の通りです。まず、核分裂によって発生した熱で水を加熱し、蒸気を発生させます。そしてこの高温高圧の蒸気が、発電機に軸でつながっているタービンを回転させ、電力を生み出します。

火力発電も同じプロセスであり、蒸気を発生させる燃料が化石燃料(天然ガスや石炭等)の燃焼によるものかどうかが原子力発電との違い(熱源の違い)となります。

発電後、蒸気は冷却器で冷却され、水に戻して再び使用されます。

参考:電気事業連合会

原子力発電の歴史

 原子力発電の歴史は、1950年代から始まりました。1951年、世界初の原子力エネルギーを使った発電が米国で実施されました。

この時期は、核技術が軍事利用から民間利用へと転換され、発電用原子炉の開発が進められました。1953年の国連総会におけるアイゼンハワー米国大統領による『Atomos for Peace(平和のための原子力)』と呼ばれる演説の後、原子力の軍事から平和利用への注目が集まり、1957年にはIAEA(国際原子力機関)が設立されます。

さらに1973年の第一次オイルショックを契機に、石油への依存を減らすため、多くの国々が原子力発電所の導入を進めました。

しかし、1970年代後半から1990年代にかけて、原子力発電は大きな試練に直面します。1979年のスリーマイル島原子力発電所の事故と1986年のチェルノブイリ原子力発電所の事故が発生し、原子力発電の安全性に対する信頼が揺らぎました。これらの事故は、特に米国で新規原子力発電所の建設を停止させるなど、原子力発電所利用の停滞を引き起こしました。

その後、1990年代から2000年代にかけて、アジア地域の経済成長や地球温暖化問題への対応として、再び原子力発電所建設の動きが強まりました。1992年の地球サミットでは、二酸化炭素(CO2)の排出削減が強調され、これを背景に多くの国々が原子力発電所の建設を進めるようになりました。

しかし、2011年の福島第一原子力発電所事故は、再び世界の原子力政策に大きな影響を与えました。この事故を受けて、一部の国々は脱原発の方針を採用しましたが、エネルギー需要の増加や地球温暖化防止対策の観点から、安全性を最優先としながら原子力発電を活用する方針を採る国も多く存在します。

このように、原子力発電の歴史は、技術革新と共に様々な試練を乗り越えてきました。今後も安全性の確保と技術の進展が求められる中、原子力発電はエネルギー供給の重要な選択肢であり続けるでしょう。

 参考:資源エネルギー庁 | 世界の原発利用の歴史と今

原子力発電のメリット

原子力発電は、他の発電方法と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく解説します。

燃料が少なく発電できる

原子力発電の最大の利点の一つは、非常に少量の燃料で大量の電力を生み出せる点です。発電には、ウランという燃料を使用しますが、ウランは非常に高いエネルギー密度を持ち、燃料ペレットと呼ばれるペットボトルのふたよりやや小さな燃料の塊1つで、一般のご家庭で使用する電気の6ヵ月分以上をつくることができます。

このため、燃料の輸送コストが大幅に削減され、エネルギーの効率的な利用が可能です。また、ウランは世界各地で採取可能であり、地政学リスクが高い中東などに依存する化石燃料に比べ、供給安定性も高いことから、資源のない日本にとっては、エネルギー安全保障の観点からも貴重な発電方法となります。

安定的な電力供給が可能

原子力発電所は、一度稼働を開始すると長期間にわたり連続して電力を供給することができます。

この特性により、風力発電や太陽光発電のような天候に左右される発電方法とは異なり、安定した電力供給が可能です。風が吹かない日や夜間でも、原子力発電は問題なく電力を供給し続けます。

家庭、病院、学校、企業などの重要な施設が停電の心配なく電力を利用することができ、社会の安定した運営に寄与します。

原子力発電はベースロード電源と位置づけられ、常に一定の電力を供給し続けられるため、送配電設備等の電力網全体の安定性を高める役割も果たします。

二酸化炭素の排出量が少ない

原子力発電は、発電する際に二酸化炭素(CO2)を排出しません。CO2は地球温暖化の主要な原因となる温室効果ガスであり、化石燃料を燃焼させる火力発電では大量に発生します。

対して、ウランの核分裂を利用する原子力発電には燃焼プロセスが存在せず、CO2排出を大幅に抑えることが可能です。 この特性において、原子力発電は環境に優しい発電方法とされています。温室効果ガスの排出削減が求められる現代において、原子力発電は重要な役割を果たすことが期待されています。世界各国がCO2排出削減に向けて動く中で、原子力発電の利用拡大は、持続可能な社会の実現に向けた有効な手段の一つとなり得ます。

原子力発電のデメリット

原子力発電は安定した電力供給と低いCO2排出量のメリットがありますが、そのリスクも理解することが重要です。以下ではデメリットについて詳しく解説します。

事故発生時の被害が大きい

原子力発電所で事故が起きた場合、放射性物質が外に漏れる可能性があり、その量によっては影響が大きくなるリスクがあります。

日本でも2011年の福島第一原子力発電所の事故では、周辺の町や自然に長期にわたる深刻な影響が出ました。周辺地域に長期にわたる甚大な被害を引き起こし、多くの人々が避難を余儀なくされ、農業や漁業などにも影響が及びました。

この事故を契機として、日本では原子力発電所の安全性向上のために新たな規制基準が設けられました。

新基準では、地震や津波、火山の噴火など、様々な自然災害に対する対策の他、万が一重大事故が発生した場合の収束方法の多重化やテロリズム・犯罪行為の発生への想定など、安全性を大きく向上させる厳格な基準が定められ、これをクリアしなければ、原子力発電所は稼働できない体制となりました。

参考:原子力規制委員会 | 新規制基準

  参考:原子力規制委員会 | 令和2年度版 原子力白書

使用済み燃料の処分方法が困難

原子力発電所で使用された燃料は、一定期間使用後に「使用済み燃料」となります。この使用済み燃料は非常に高い放射能を持ち、その処理と最終処分が大きな課題となっています。

高レベル放射性廃棄物を安全なレベルまで減衰させるには、数万年から数十万年という非常に長い時間がかかるため、人類の生活圏から隔離する方針が世界で共有化されています

日本では青森県六ケ所村に一時的に保管されていますが、最終的には地下深くに埋める「地層処分」が予定されています。この地層処分を受け入れる検討をしたり、新たに検討を始めたりする自治体の動きも複数見られますが、関係者の理解を得て地層処分を行う場所が決まるまでには、まだまだ時間が掛かると言われています。

現在は世界的にCO2削減が望まれており、その観点から発電時にCO2を排出しない原子力発電には一定の期待がありつつも、こうした課題の解決に向けては、疑問の解消等に向けた関係者との対話・理解を進めるために真剣に取り組む必要があると言えます。

初期投資・維持に莫大な金額が必要

原子力発電所の建設には非常に高額な初期投資が必要です。発電所の建設だけでなく、安全性を確保するための高度な技術や設備、厳しい規制基準を満たすための対策など、多くの費用がかかります。

さらに、原子力発電所は稼働していない期間でも維持費がかかります。これには、施設の保守管理や安全対策の継続、さらには廃炉に向けた準備などが含まれます。

廃炉には数十年単位の時間と莫大なコストがかかるため、運転終了後の負担も非常に大きくなります。 このように、原子力発電所は建設から運用、そして廃炉に至るまで一貫して高額なコストが伴います。大きな電力を長期間生み出せる特性から単位(1キロワットアワー)あたりのコストは火力発電と比較しても安価または同等と言われてきましたが、近年の安全対策費の増加により、経済的な視点でも検証が必要と言われています。

各国の原子力発電に対する方針

原子力発電は多くの国々でエネルギー政策の重要な一部となっていますが、その利用方針や依存度は国ごとに異なります。

安全性や環境影響、エネルギー自給の観点から、それぞれの国がどのように原子力発電を位置づけているのかを見ていきましょう。

日本の方針

日本は東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を経験し、原子力発電の安全性に対する厳しい視線が注がれています。

事故後、すべての原子力発電所は一時的に停止され、再稼働には厳格な新規制基準のクリアが求められました。

この新基準は、地震や津波に対する耐性を高めることを目的としており、厳しい審査を経た上で再稼働が許可されます。

現在、日本ではいくつかの原子力発電所が稼働していますが、その数は震災前に比べて大幅に減少しています。

 参考:原子力規制委員会 | 新規制基準

世界各国の方針

原子力発電の利用方針は国ごとに大きく異なります。

アメリカ、フランス、中国、日本は原子力発電所の数が多い国として知られていますが、それぞれの国での原子力発電の役割や依存度には違いがあります。

アメリカは94基の原子力発電所を運用しており、これは世界で最も多い数です。1979年のスリーマイル島原子力発電所事故以降、原子力の新規建設は停滞しているものの、既存の原子力発電所は重要な電力供給源として稼働し続けています。

フランス・中国も日本と同様に発電に占める原子力発電の割合が高くなっています。

一方で、脱原発に向けて動いている国もあります。ドイツでは脱原発の方針として、2022年までにすべての原子力発電所を閉鎖する決断をし、現在ではすべての原子力発電所が閉鎖しています。しかしドイツ国内では、脱原発は歓迎だけど、電気代が上がるのは困る、といった声も聞かれます。

参考:資源エネルギー庁 | 第2節 一次エネルギーの動向

原子力発電所の再稼働はいつになる?

日本では、再生可能エネルギーの普及とともに、原子力発電所の再稼働に対する関心が高まっています。2024年に再稼働が予定されている原子力発電所について、現状や課題を詳しく解説します。

2024年の再稼働予定の原子力発電所

現在、日本には54基の商業用原子力発電所がありますが、福島第一原子力発電所の事故後に全て停止され、その後再稼働に向けた審査と改修が行われてきました。

その結果2024年6月現在、再稼働している原子力発電所は、関西電力大飯原子力発電所3号機や高浜原子力発電所4号機など計10基(定期検査で停止中も含む)となっています。(最新情報は原子力規制委員会の「原子力発電所の現在の運転状況」をご確認ください。)

2024年内には女川原子力発電所と島根原子力発電所のBWR(沸騰水型軽水炉)2基が再稼働の予定となっています。

参考:資源エネルギー庁 | 原子力発電所の現状

今後の再稼働の方向性

2024年4月時点では以下の10基の原子力発電所が、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故後に策定された新規制基準への対応状況審査中となっています。

  • 泊発電所 3基
  • 大間原子力発電所 1基
  • 柏崎刈羽原子力発電所 2基
  • 女川原子力発電所 1基
  • 浜岡原子力発電所 2基
  • 島根原子力発電所 1基

審査に通過したのちに都道府県知事の認可がおり次第、再稼働となると言われています。

エネルギー安定供給の一翼を担うクリーンなエネルギー

再生可能エネルギーは、持続可能なエネルギー供給を目指す上で重要な役割を果たします。

特に、化石燃料の枯渇や気候変動のリスクを軽減するため、クリーンで持続可能なエネルギー源へのシフトが求められています。

再生可能エネルギーのメリットや種類、そして課題について詳しく解説します。

再生エネルギーを活用するメリット

現在、日本のエネルギー資源として主に使用されているのは、石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料です。しかし、これらの資源には限りがあり、将来的な枯渇が懸念されています。

さらに、化石燃料の使用はCO2排出の主因となり、地球温暖化の進行を加速させる要因となっています。これに対し、再生可能エネルギーは自然の力を利用し、持続可能なエネルギー供給を実現するための重要な手段とされています。

また、再生可能エネルギーは国内で生産可能なため、エネルギーの自給率を向上させることができ、エネルギーの輸入依存度を低減することができます。

再生エネルギーの種類と特徴

再生可能エネルギーにはさまざまな種類があり、それぞれに特徴と利点があります。また、紹介する再生エネルギーは、発電の安定性や性質から以下に分類することができます。

  • ベースとなる安定電源・・・原子力発電、地熱発電など
  • ベース電源としても、調整電源としても使用できる電源・・・火力発電(バイオマス含む)、水力発電
  • 環境に左右される電源・・・太陽光発電、風力発電など

この性質を踏まえた上で、以下の再生エネルギーの種類と特徴を見ていきましょう。

太陽光発電

太陽光発電は、太陽の光を電気に変える技術です。主な利点は太陽という持続可能なエネルギー源であることです。

また、設置場所の柔軟性が高く、家庭や企業の屋根にも設置可能です。太陽光発電は初期投資が必要ですが、運転コストが低いため長期的には経済的な選択肢となり得ます。

ただし、天候に左右されるため、安定的な電力供給が難しく、現在は蓄電池や他の発電方法と組み合わせて使用されることが主流となりつつあります。

水力発電

水力発電は、流水の力を利用してタービンを回し、電気を生成する方法です。利点としては、発電量が安定していること、制御が容易なことが挙げられます。

ただし、大規模なダム建設が必要なため、環境への影響や建設コストが高いという課題があります。

風力発電

風力発電は、風の力で風車を回転させ、その運動エネルギーを電気に変える技術です。

風力発電の利点は、太陽光発電と同じく、持続可能な無限に近いエネルギー源であることです。

しかし、風力発電は風の強さや風向きに依存するため、発電量が不安定であるというデメリットがあります。

バイオマス発電

バイオマス発電は、木材や農業廃棄物などの有機物を燃焼させて発電する方法です。この方法は燃焼によりCO2を排出しますが、廃棄物のリサイクルに貢献し、CO2排出量を相殺(カーボンニュートラル)できる点が利点です。ただし、バイオマス資源の安定供給とコストの課題があります。

地熱発電

地熱発電は、地下の熱エネルギーを利用して発電する方法です。地熱発電は天候などに左右されず安定した電力供給が可能という特徴があります。

しかし、適切な地熱資源の場所が限られていたり、地下を掘削するにあたっての開発コストが高いという課題があります。

再生エネルギーの課題

再生可能エネルギーには多くの利点がある一方で、いくつかの課題も存在します。

例えば、太陽光や風力発電は自然条件に依存するため、発電量が不安定であることが問題です。常に一定の電力を供給することが難しく、バックアップ電源が必要となります。

また、再生可能エネルギーの発電設備の建設には高額な初期投資が必要です。

さらに、発電効率が低いため、広大な土地が必要となることも課題です。再生可能エネルギーの発電コストは依然として高く、既存の化石燃料による発電に比べて経済的な競争力が低いことも課題です。

これらの課題を克服するためには、技術開発の進展や政策的な支援が必要です。

環境と安全のためにできることを始めよう

原子力発電はCO2を排出しない、安定した電力供給ができるといったメリットがある一方で、環境への配慮や安全性について課題を抱えています。

この課題に対する回答として、再生可能エネルギーに注目が集まっています。

再生可能エネルギーは原子力発電と同じく、燃料の枯渇がない点や温室効果ガスを排出しないため地球温暖化対策に繋がる点が特徴として挙げられます。

しかしながら再生可能エネルギーにも大規模な設備投資が必要、天候の影響を受けやすく発電量が不安定などの課題があります。

どちらの発電方法がより良いということではなく、環境性や経済性を両立していくことが必要です。

エネワンでんきでは、再生可能エネルギー発電の持つ「CO2(二酸化炭素)を排出しない」という環境価値を、非化石証書という仕組みを利用してお届けする「実質再エネプラン」を選べます。

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