電気代はどう計算する?電化製品ごとの計算とケース別の平均も
電気代はどう計算する?電化製品ごとの計算とケース別の平均も
電気代の内訳や計算方法がわかれば、ライフスタイルに合った電力会社や料金プランを選びやすくなります。高額な電気代に悩んでいる方は、電化製品ごとの電気代をチェックしてみましょう。電気代が高くなる原因や節電のヒントも紹介します。
目次
電気代の計算式の内訳
電気料金は、前月の検針日から当月の検針日の前日までをひと区切りとし、以下の計算式で算出します。
- 電気料金=基本料金+電力量料金(燃料費調整額を含む)+再エネ賦課金
月々の電気代はチェックしていても、内訳や計算の根拠までを把握している方はそう多くはないはずです。電気料金を構成するそれぞれの要素について見ていきましょう。
基本料金
「基本料金」は、設備費や人件費、機材費などの諸経費を賄う目的で設定されており、電力使用量に関係なく毎月必ず発生するのが特徴です。料金制度は、以下の2種類に大別されます。
- アンペア制
- 最低料金制
「アンペア制」は、契約中のアンペア数によって基本料金が決まります。アンペア数が大きくなれば、基本料金も高くなる仕組みです。
「最低料金制」では、アンペアによる契約区分はせずに一律の最低料金が定められています。料金には一定の最低電力使用量が含まれており、その一定量を超えた部分が電力量料金として加算されます。
※「最低料金制」は主に関西電力、中国電力、四国電力、沖縄電力などが採用している方式です
電力量料金
「電力量料金(燃料費調整額を含む)」は、月々の電力使用量によって変動する従量制料金です。1kWhあたりの電力量料金単価は、電力会社や契約プランによって異なります。
- 電力量料金=(電力量料金単価×1カ月の電力使用量)±(燃料費調整単価×1カ月の電力使用量)
大手電力会社の従量電灯プランなどをはじめ、多くの電力プランに「3段階料金制度」が採用されています。1kWhあたりの電力量料金単価が3段階で設定されており、電力使用量が多くなればなるほど単価が高くなる仕組みです。
以下は、2024年12月13日時点における東京電力エナジーパートナーの電力量料金単価です。(※)
- 第1段階料金(120kWhまで):29円80銭
- 第2段階料金(120kWh超300kWhまで):36円40銭
- 第3段階料金(300kWh超過分):40円49銭
段階ごとの電力使用量に電力量料金単価を掛け、燃料費調整額を足したものが電力量料金ということになります。
※出典:従量電灯B・C|電気料金プラン|東京電力エナジーパートナー株式会社
燃料費調整額
電力量料金に含まれる「燃料費調整額」には、主に輸入に頼る火力発電の燃料の価格変動を電気料金に反映させる目的があります。
これは事業者の仕入努力の及ばない燃料価格や為替レートの影響を電気料金本体から分離し、燃料価格の変動をより迅速に料金に反映させることで、事業者の経営環境の安定を図り、安定供給と公正な料金を実現しようというものです。
このように料金変動を平準化するために設けられたのが「燃料費調整制度」です。燃料調整額は以下の計算式で算出されます。
- 燃料調整額=燃料費調整単価×1カ月の電力使用量
燃料費調整単価は、3カ月間の原油やLNG・石炭それぞれの貿易統計価格による「平均燃料価格」を基に算定し、基準設定当時の原油・LNG・石炭の貿易統計価格に基づく「基準燃料価格」との差分から設定されます。 燃料費調整単価は、2カ月後の電気料金に反映させる決まりです。平均燃料価格が基準燃料価格を上回る場合は電気料金に加算し、下回る場合は減算します。
再生可能エネルギー発電促進賦課金
再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度が「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」です。これは、発電設備などのコストが高い再生可能エネルギーの導入がより普及することを後押しするための制度です。 この買取費用の一部を電気をご利用の皆様から再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)という形で集めています。
- 再エネ賦課金=再エネ賦課金単価×1カ月の電力使用量
再エネ賦課金単価は、年度ごとに経済担当大臣が決定します。2023年度の賦課金単価(2023年5月検針分から2024年4月検針分まで)は1.40円/kWhです。(※)
※出典:再生可能エネルギーのFIT制度・FIP制度における2023年度以降の買取価格等と2023年度の賦課金単価を設定します (METI/経済産業省)
電化製品の電気代の計算方法
月々の電気代が高いと感じるご家庭は特に、電気代の節約を心がけたいと考えているのではないでしょうか。電化製品の消費電力量や電気代の計算方法を知ることで、より節電と節約に役立てることができます。
電化製品の電気代は、以下の計算式で算出します。
- 電化製品の電気代=1時間あたりの消費電力(kW)×使用時間(時間)×料金単価(円/kWh)
料金単価は、電力会社・契約プラン・地域によって変わりますが、ここでは全国家庭電気製品公正取引協議会が目安単価として示す「31円(税込)/kWh」で計算します。(※)
※出典:よくある質問 Q&A|公益社団法人 全国家庭電気製品 公正取引協議会
エアコン
エアコンの取扱説明書や製品カタログには、消費電力(W)が記載されているのが一般的です。
消費電力とは、電化製品を動かすために必要な電気エネルギーを指します。電気料金を計算する際は、消費電力に電化製品の「使用時間(h)」を掛けて「消費電力量(kWh)」を算出し、さらに「1kWhあたりの料金単価」を掛けます。
消費電力の単位が、W(ワット)の場合は、kW(キロワット)の単位に換算しましょう。1kWは1000Wのため、900Wのエアコンは0.9kWです。
最大消費電力が900W(0.9kW)・最小消費電力が100W(0.1kW)のエアコンの場合、1時間あたりの電気代にどれだけの幅があるのかを見てみましょう。
- 900Wの場合:1時間あたり27.9円(0.9kW×1時間×31円=27.9円)
- 100Wの場合:1時間あたり3.1円(0.1kW×1時間×31円=3.1円)
テレビ
消費電力が115W(0.115kW)のテレビの場合、1時間あたりの電気代は約3.6円(0.115kW×1時間×31円=3.565円)です。
省エネ性能カタログ電子版には、製品ごとの「年間消費電力量」が記載されています。1年間にどれくらいの電気代がかかるかを計算してみましょう。
- 1年間の電気代(円)=年間消費電力量(kWh)×料金単価(円/kWh)
例えば、年間消費電力量が130kWhのテレビの場合、1年間の電気代は4,030円(130kWh×31円=4,030円)です。
冷蔵庫
年間消費電力量が300kWhの冷蔵庫の場合、1年間の電気代は9,300円(300kWh×31円=9,300円)です。1日あたりの電気代は、以下の計算式で算出できます。
- 1日あたりの電気代(円)=年間消費電力量(kWh)×料金単価(円/kWh)÷365
300kWhの冷蔵庫であれば、1日あたりの電気代は約25.5円(300kWh×31円÷365=25.47円)です。
近年の冷蔵庫は省エネ性能に優れており、電気代を安く抑えられます。小型の冷蔵庫が必ずしも消費電力が低いとは限らないため、購入の際は年間消費電力量をチェックしましょう。
照明器具
照明器具は、LEDと蛍光灯で電気代が変わります。一般的に、蛍光灯よりもLEDの方が省エネ効果が高く、電気代が安く済みます。
消費電力が65W(0.065kW)の蛍光灯シーリングライトの場合、1時間あたりの電気代は約2円(0.065kW×1時間×31円=2.015円)です。
消費電力が43W(0.043kW)のLEDシーリングライトに交換すれば、1時間あたりの電気代は約1.3円(0.043kW×1時間×31円=1.333円)にまで抑えられます。 省エネ性能カタログ電子版には、製品ごとの「消費電力(W)」や「年間の目安電気料金(円)」などが記載されているため、購入時に参考にしましょう。
一般家庭の平均的な電気代
電気代は電気会社や料金プランのほか、家族の人数やライフスタイルによって大きく変わります。総務省統計局の家計調査を基に、2人以上の世帯における電気代の平均額を紹介します。
月別の電気代の平均
総務省統計局の家計調査のデータによると、2022年1~12月の電気代の平均額(月別)は以下の通りです。
- 1月:12,938円
- 2月:15,331円
- 3月:16,273円
- 4月:13,931円
- 5月:11,811円
- 6月:9,990円
- 7月:9,869円
- 8月:11,914円
- 9月:13,202円
- 10月:12,805円
- 11月:11,560円
- 12月:12,514円
電気代は使用した月の翌月に請求されるため、上記のデータは請求月の1カ月前の電力使用量を反映しています。
電気代が上がりやすいのは、暖房器具の使用頻度が増える冬です。日照時間が短く家の中にいる時間が自然に長くなることから、電気代がかさみやすくなると考えられます。
※出典:家計調査 家計収支編 二人以上の世帯用途分類 004 用途分類(世帯人員別) | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
地域別の電気代の平均
電気代は、地域によっても差があります。2022年における地域別の電気代の平均額は以下の通りです。
- 北海道:13,084円
- 東北:13,835円
- 関東:12,262円
- 北陸:15,517円
- 東海:12,439円
- 近畿:12,221円
- 中国:14,743円
- 四国:13,450円
- 九州:11,894円
- 沖縄:11,616円
最も電気代が高いのは、北陸(15,517円)でした。最も電気代が低い沖縄(11,616円)とは3,900円以上の差があります。東京を含む関東は12,262円で、全国的に見ても電気代はそれほど高くありません。
※出典:家計調査 家計収支編 二人以上の世帯用途分類 004 用途分類(世帯人員別) | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
電気料金が高騰している理由
ここ数年で電気料金は大きく上がってしまっており、家計支出の中でも電気代が比較的大きな割合を占めていると言われています。多くの電力会社が値上げに踏み切り、不安を感じていらっしゃる方も多いかもしれません。電気料金が上がっている理由を解説します。
国内の電力供給不足
1つ目の理由は、国内の電力供給が十分でないことが挙げられます。日本は、2011年の東日本大震災をきっかけに、一部を除く原子力発電所の稼働を停止しました。
原発の不足分は主に火力発電所の炊き増しによって賄われていますが、火力発電所で発電できる電力量にも限りがあります。実際、各地では火力発電所の老朽化が進んでおり、休廃止によって規模が縮小しているのが実情です。 需要と供給の法則では、需要が供給を上回れば電力が流通する市場価格も上がります。ICT関連機器の増加によって電気の使用が増えている現代において、国内の電力供給力は十分といえません。
発電コストの上昇
2つ目の理由は、発電コストの上昇です。ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、多くの国々はロシアからの燃料輸入を制限しました。結果として世界的にエネルギーがひっ迫し、燃料価格が高騰してしまったのです。
日本はエネルギー資源のほとんどを、海外輸入に頼っています。円安の進展が燃料コストの上昇に拍車を掛け、2022〜2023年には電気料金が大きく上がりました。前述の通り、燃料価格の変動は「燃料費調整額」に反映されています。
2023年後半からは輸入価格が下がってきましたが、2023年1月使用分から国が行ってきた「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は2024年4月使用分で終了する予定です(2024年5月は激変緩和の幅を縮小)。終了後は、また電気代が高くなったと感じることもあるかもしれません。(※)
※出典:電気・ガス価格激変緩和対策事業|経済産業省 資源エネルギー庁
電気代を節約する方法
電気代を抑えるには、電気の使い方やライフスタイルをしっかり見直してみることが重要です。必要に応じて、電化製品の買い替えや電力会社の切り替えも検討しましょう。
電化製品の使い方を見直す
電気代が高いと思いながらも、実際に行動に移していないということも多いものです。まずは電気代を抑えるため、電化製品の使い方を見直しましょう。今すぐにできる節電のテクニックをいくつか紹介します。
- エアコンは頻繁にオン・オフせず、自動運転モードを使う
- エアコンの温度を1℃上げる(下げる)
- 遮熱カーテンで部屋の暖気や冷気を外に逃がさない
- 洗濯物はまとめて洗濯する
- 白熱灯や蛍光灯をLED電球に切り替える
- 家族で1つの部屋に集まり、エアコン・照明の利用を減らす
古い電化製品を買い替える
近年の電化製品は、省エネ性能に優れています。長く使っている電化製品があれば、買い替えを検討しましょう。省エネ性能は「統一省エネラベル」や「省エネルギーラベル」などで見分けられます。
統一省エネラベルは、省エネルギーラベリング制度に基づき、家電販売店などの小売事業者が省エネ性能を表示するものです。ラベルからは、以下のような情報がわかります。
- 省エネ性能の多段階評価点(5.0~1.0までの41段階の数字と星の数で評価)
- 省エネルギーラベル(トップランナー制度における省エネ基準の達成度合い)
- 年間目安エネルギー料金
メーカーでも省エネルギーラベルを製品本体やカタログなどに表示しています。
- 省エネ性マーク(省エネ基準達成率100%以上の製品には、グリーンのマークを表示)
- 省エネ基準達成率(トップランナー基準値の達成度合い)
- エネルギー消費効率
- 目標年度(トップランナー基準を達成すべき年度)
トップランナー制度では、エネルギーを多く消費する特定機器を対象にエネルギー消費効率の基準値を設定し、目標年度までの達成を求めています。
※出典:統一省エネラベルが変わりました|経済産業省・資源エネルギー庁
契約アンペア数を下げる
アンペア制を採用している電力会社の従量電灯プランの基本料金は契約アンペア数に比例して高くなるため、契約アンペア数を下げて電気代を安くする手もあります。以下は、東京電力エナジーパートナーの従量電灯Bの基本料金です。(※)
- 10A:295円24銭
- 15A:442円86銭
- 20A:590円48銭
- 30A:885円72銭
- 40A:1,180円96銭
- 50A:1,476円20銭
- 60A:1,771円44銭
契約アンペア数を40Aから30Aに下げるだけで、月々の料金が200円以上安くなることがわかります。ただし、契約アンペア数がライフスタイルに合っていないと、ブレーカーが頻繁に落ちてしまうため、一度に使う家電の消費電力を事前に把握しておきましょう。
※出典:従量電灯B・C|電気料金プラン|東京電力エナジーパートナー株式会社
電力会社を切り替える
2016年4月1日に電力の小売が全面的に自由化されて以降、消費者は電力会社を自由に選択できるようになっています。どの電力会社を選んでも電気の質は変わらないため、ライフスタイルに合うプランを提供している電力会社に切り替えましょう。
2016年4月1日以降に参入した、小売のみを主とする電力会社は「新電力」と呼ばれます。お得なプランやキャンペーンを実施する会社が多く、今よりも電気代が安くなる可能性が高いでしょう。
料金単価が市場価格と連動する「市場連動型プラン」は、燃料の価格変動の影響をダイレクトに受けます。市場価格に応じて電力使用量をコントロールする必要があるため、万人に合うプランとはいえません。
電力会社によっては、電気+ガスなどのセット割を提供しているケースがあります。セット割なら光熱費の節約につながる可能性がある上、手続きや家計管理の手間を軽減できるでしょう。問い合わせ先も一本化できて便利です。
電気+ガスのセット割に興味がある方には、エネワンでんきのセット割がおすすめです。サイサンやいちたかガスワンのプロパンガス・都市ガスとエネワンでんきの同時契約で割引が適用されます。
出典:北海道のエネルギーをまとめてガスワンスイッチ|株式会社いちたかガスワン
自宅の電気代を計算してみよう
国内の電力供給不足や発電コストの上昇などにより、家計に占める電気代の割合が大きくなってしまっています。
月々の電気代を抑えるには、消費電力の大きな電化製品がないかを調べたり、電気代の内訳を細かくチェックしたりして、電気に意識を向けることも有効です。
電気料金の内訳や電気代の計算方法を知ることは、節電や節約意識を高めることに役立ちます。電化製品は消費電力や電力の料金単価がわかれば、比較的簡単に算出できるため、実際に計算してみるのがおすすめです。