
海洋汚染の発生原因は?海洋汚染が及ぼす影響や止めるための取り組み
海洋汚染の発生原因は?海洋汚染が及ぼす影響や止めるための取り組み
海洋汚染は近年大きく取り上げられる環境問題の一つです。なぜ海洋汚染が発生するのか、地球や私たちにどのような影響を及ぼすのかを知り、一人ひとりができることを考える必要があります。海洋汚染の定義・発生原因・影響、具体的な対策について解説します。
目次
海洋汚染とは

そもそも海洋汚染とはどのようなことを指すのでしょうか。まずは、海洋汚染の定義や現状を見ていきましょう。
海洋汚染の定義
海洋汚染とは、人間の活動によって引き起こされる海の汚染のことです。ごみの不法投棄、工場や家庭からの排水、船舶からの油の流出などが原因で発生し、海の生態系や人間の健康に悪影響を及ぼします。
「海洋法に関する国際連合条約」では、「海洋環境の汚染」として海洋汚染が明確に定義されています。この条約は1982年に採択され、日本は1996年に締結しました。2024年9月時点で169の国とEUが締結しています。
また、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」では、海洋汚染の防止がターゲットに含まれています。海洋汚染は地球規模で取り組むべき喫緊の課題として扱われているのです。
※出典:海洋法に関する国際連合条約
※出典:14.海の豊かさを守ろう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
海洋汚染の現状と今後の予測
海上保安庁が公表する資料によると、2023年に日本の周辺海域で発生した海洋汚染の件数は397件です。油による海洋汚染が259件、廃棄物による海洋汚染は129件となっています。
また、世界の海には合計で約1億5,000万トンのプラスチックごみが存在し、少なくとも年間約800万トンが新たに流入しているとされています。800万トンは旅客機約5万機に相当する重さです。
2050年には海洋プラスチックごみが海の魚の量を上回り、消費する原油の約20%がプラスチック生産に使用されると予測されています。
海洋汚染の発生原因

海洋汚染はさまざまな原因によって引き起こされています。主な発生原因を確認しましょう。
プラスチックごみ
海洋汚染の最も大きな原因はプラスチックごみです。不適切に捨てられたものや自然災害で発生したものが海に流れ着き、海洋プラスチックごみとなります。
プラスチックごみは分解されにくいため、海を漂流し続け海洋生物を傷つけたり、誤食による死を招いたりしかねません。また、景観を損ねたり船舶の航行を妨げたりするなど、漁業や観光業にも悪影響を与えます。
分解されるまでに長い年月がかかるプラスチックごみは、海中で長期間にわたり分解されずに残り続けます。
船舶の事故による油の流出
船舶の事故による油の流出も、海洋汚染の深刻な原因の一つです。船舶の座礁・衝突事故や、燃料の積み下ろし時などの人為的なミスにより、油が流出する事故が発生します。
海上保安庁の資料によると、船舶からの油の排出原因で最も多いのが、バルブ操作不適切やポンプ操作不適切といった取扱不注意です。その次に多い原因は船舶海難となっています。
海洋に流れ出た油は、海洋生物に深刻な影響を及ぼしかねません。海上の油をすべて除去するのは困難であり、油の被害は流出場所から遠く離れた地域にまで及ぶことがあります。
生活排水
生活排水とは、お風呂・台所・トイレ・洗濯などから出る排水のことです。日本では生活排水の大半が下水道で処理されていますが、処理されずにそのまま海へ流れ出る分もあります。
生活排水のうち最も多くの汚れを含むとされているのが、台所からの排水です。食べ残しや調理に使われた油などが含まれています。
水の汚れは水中の微生物にとっては栄養分になりますが、生活排水が多くなると栄養分の分解で微生物が余計な酸素を使ってしまい、魚の大量窒息死や悪臭の発生につながるのです。
※出典:生活排水読本 | 環境省
工業排水
工業排水とは、工場や事業所で使用された後の水のことです。製造工程で使われた水には有害物質が含まれており、そのまま海に流れ出ると海洋汚染の原因になります。
日本で工業排水が社会問題となった代表的な事例が、水俣病とイタイイタイ病です。いずれも人間に深刻な健康被害を及ぼしています。
現在は工業排水の基準が水質汚濁防止法で厳密に定められていますが、世界では工業排水による海洋汚染がまだまだ発生し続けているのが実情です。
海洋汚染が及ぼす影響

海洋汚染による代表的な影響は、生態系破壊・地球温暖化・健康被害です。それぞれの具体的な内容を解説します。
海の生態系が破壊される
海洋プラスチックごみは海中で細かく砕かれていき、最終的に5mm以下のマイクロプラスチックになります。マイクロプラスチックによる影響で問題となっているのが、サンゴ礁の成長阻害です。
サンゴ礁は多くの生物の住処や産卵場所であるとともに、炭酸カルシウムの形成を通じて海中の二酸化炭素の調整にも寄与しています。しかし、マイクロプラスチックが増えてサンゴ礁が減少すると、生物多様性に深刻な影響を及ぼして生態系のバランスが崩れかねないのです。
地球温暖化が進む
一般社団法人環境金融研究機構によると、海洋プラスチックごみは日射の影響で劣化し、温室効果ガスを発生させます。温室効果ガスの一つであるメタンには高い温室効果があり、海洋プラスチックごみが増えると地球温暖化が加速する恐れがあります。
温室効果ガスを最も多く排出するプラスチックはポリエチレンです。レジ袋の主な原料にもなっているポリエチレンは、生産量・廃棄量ともに世界で最も多い合成高分子化合物であり、廃プラスチック対策が温暖化対策の重要なテーマの一つとなっています。
健康に悪影響を及ぼす
海洋プラスチックごみが増えると、魚介類が取り込むマイクロプラスチックの量も増えるおそれがあります。マイクロプラスチックは極めて小さく、塩や飲料水の中にも含まれる可能性があるため、私たちはさまざまな食物から化学物質を取り込んでいるかもしれないのです。
マイクロプラスチックは、自然環境下ではほとんど分解されません。海洋生物がマイクロプラスチックを摂取し、それを人間が食べることで、マイクロプラスチックが体内に蓄積して健康被害を及ぼす問題が指摘されています。
海洋汚染を止める方法はある?

海洋汚染に対しては、国内外でさまざまな取り組みが進められています。また、海洋汚染を止めるためには、個人レベルで行動することも重要です。
海洋汚染問題に対する国内外の取り組み
海洋汚染問題に対する世界の取り組みとしては、前述したSDGs目標No.14「海の豊かさを守ろう」以外にも、次のような条約により防止対策がとられています。
- ロンドン条約(ロンドンダンピング条約):海洋への廃棄物投棄を規制する条約
- マルポール73/78条約:船舶の運航や事故に伴う海洋汚染を防止する国際条約
- OPRC条約:大規模油汚染事故への準備および対応を国際的に促進するための条約
また、日本では「海洋汚染防止法」で海洋への廃棄物の投棄を原則的に禁止しているほか、海洋プラスチックごみを減らす具体的な取り組みを定めた「海洋プラスチックごみ対策アクションプラン」も打ち出されています。
※出典:気象庁|海洋汚染の知識
※出典:海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 | e-Gov法令検索
※出典:海洋プラスチックごみ対策アクションプランの概要 | 環境省
個人でもできる海洋汚染対策
私たちにもできる海洋汚染対策には、次のようなものがあります。
- プラスチックごみを減らす(マイボトルを持ち歩く、マイバッグを使う)
- 生活排水に注意する(洗剤の量を減らす、油をそのまま流さない)
- MSC認証マークが付いた商品を購入する
- ごみ拾いのボランティア活動に積極的に参加する
一人ひとりの心がけが海洋ごみを減らし、きれいな海を取り戻すことにつながります。
※出典:MSC「海のエコラベル」とは | Marine Stewardship Council
海洋汚染の原因を知り、できることから始めよう

海洋汚染は私たちの生活と深く関わっており、その原因や影響を知ることが第一歩です。普段は意識していないさまざまなことが、海洋汚染につながっていることがわかります。
海洋汚染は大きな問題に感じられるかもしれませんが、個人の行動も確実に力になります。身近なところから少しずつ始めていきましょう。
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エネワンでんき編集部
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