知られざる地熱発電のメリットとは?安定供給・環境性に優れた再エネをわかりやすく解説

知られざる地熱発電のメリットとは?安定供給・環境性に優れた再エネをわかりやすく解説

知られざる地熱発電のメリットとは?安定供給・環境性に優れた再エネをわかりやすく解説

私たちの足もとに眠る地球の熱エネルギーを活用した地熱発電は、再生可能エネルギーの一つです。日本は世界有数の地熱資源国でありながら、そのポテンシャルを十分に活かしきれていない現状があります。地熱発電には他の発電方法にはない多くのメリットがあり、デメリットを克服することで、豊富な地熱資源をエネルギーとしてさらに活用できる可能性があるのです。しかし、その事実はあまり知られていません。この記事では、地熱発電の仕組みや方式、現状、メリット・デメリットをわかりやすく解説し、地熱発電が持つ可能性と今後の展望について考察します。

【目次】

1.地熱発電とは?

 1-1.地熱発電の仕組み

 1-2.地熱発電の3方式

2.地熱発電の現状

 2-1.世界の導入状況

 2-2.日本の主要発電所

3. 地熱発電のメリット

 3-1.CO₂排出がほぼゼロで環境に優しい

 3-2.天候・昼夜に左右されない安定供給

 3-3.純国産エネルギーとしての強み

 3-4.余熱・蒸気の多用途活用

4.地熱発電のデメリット

 4-1.初期投資と開発リスク

 4-2.環境や地域への影響

 4-3.立地条件

 4-4.エネルギー変換効率

5.地熱発電は環境に優しいエネルギー

地熱発電とは?

そもそも、地熱発電とはどのような仕組みで発電しているのでしょうか。メリット・デメリットを確認する前に、まず地熱発電における発電の仕組みを知っておきましょう。

地熱発電の仕組み

地熱発電は、地中深くに存在するマグマなどで熱せられた高温の水や水蒸気を利用して発電を行なう再生可能エネルギーの一つです。

地熱発電では地下へ向かって掘削した井戸から蒸気や熱水を取り出し、そのエネルギーでタービンを回して電気を生み出します。やかんの水が沸騰して蒸気が出るのと同じ原理を大規模に応用したものです。

地熱発電の3方式

地熱発電にはおもに以下の3つの方式があります。

ドライスチーム方式地下から直接高温の蒸気を取り出し、タービンを回す方式。
フラッシュ方式高温高圧の熱水を地上に取り出し、減圧して蒸気を発生させて利用する方式。蒸気と熱水を分離する装置(気水分離器)で1回だけ分離して発電に利用する「シングルフラッシュ方式」と、分離した熱水をさらに減圧し、蒸気(高圧と低圧の2タイプ)を取り出して発電に再度利用する「ダブルフラッシュ方式」がある。
バイナリーサイクル方式水蒸気の温度が中低温で直接タービンを回すことができない場合に、沸点の低いアンモニアなどの媒体を加熱し、蒸発させてタービンを回す方式。

日本で最も発電量の多い地熱発電方式はフラッシュ方式です。ダブルフラッシュ方式はシングルフラッシュ方式と比べて10~25%高い出力を得られますが、設備も複雑になります。

また、地熱発電のもととなる地熱資源には「蒸気卓越型」と「熱水卓越型」の2種類があります。蒸気卓越型は高温の蒸気のみが噴出するタイプ、熱水卓越型は熱水と蒸気が混ざり合った状態で噴出するタイプです。

このうち、ドライスチーム方式での地熱発電に向いているのは蒸気卓越型の地熱資源のみです。日本の地熱資源は、その多くが熱水卓越型であり、ドライスチーム方式を採用している地熱発電所は松川地熱発電所しかありません。

比較的低温の地熱水で発電が可能なバイナリーサイクル方式は、他の方式と比較して出力は小さいものの、必要な地熱資源を得るのが容易な点が特徴です。

地熱発電の現状

ここでは、世界と日本における地熱発電の現状についてお伝えします。

世界の導入状況

世界の地熱発電市場は、電力需要の増加や環境問題への対応を背景に拡大しています。2020年時点で世界の地熱総発電容量は約16.0GWに達し、アメリカ、インドネシア、フィリピン、トルコ、ケニア、アイスランドなどが主要な導入国です。

主要な導入国のほとんどで地熱発電の設備容量は増加傾向です。一例を挙げるとインドネシアでは、2028年までに600万kWまで地熱発電設備容量の増加を計画しています(2020年6月時点での地熱発電設備容量は228.9万kW)。

他の再生可能エネルギーと比較して土地利用が少なくてすむ地熱発電は、環境に優しく、安定供給が期待できる点が評価されています。

出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構:熱発電導入拡大研究開発

出典:独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構:地熱資源情報 地熱を知る・学ぶ

出典:日本地熱協会:世界の地熱発電

日本の主要発電所

日本は地熱資源量で世界第3位を誇りますが、発電設備容量は世界10位前後にとどまっています。2018年度末時点で 66 地点 87 ユニットの地熱発電所が稼働しており、2024年時点の地熱発電所の設備容量は合計約54万kWです。おもな発電所には、国内最大の大分県・八丁原発電所、岩手県・松川地熱発電所、秋田県・山葵沢地熱発電所などがあり、東北や九州地方に集中しています。

出典:独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構:地熱資源情報 地熱を知る・学ぶ

出典:日本地熱協会:日本の地熱発電所

出典:環境省:我が国の地熱発電の概要

出典:参議院:地熱発電

地熱発電のメリット

地熱発電は環境への負荷が少なく、安定した電力供給が見込まれる点で、今後のエネルギー政策や脱炭素社会の実現において大きな役割を担うと期待されています。ここでは地熱発電のメリットについて、詳細を見ていきましょう。

CO₂排出がほぼゼロで環境に優しい

地熱発電は、燃料を燃やさずに地中の熱エネルギーを利用するため、発電時のCO₂排出量が非常に少ないのが特徴です。これは地球温暖化対策や脱炭素社会の実現に大きく貢献します。

天候・昼夜に左右されない安定供給

地熱発電は安定供給可能な電源です。太陽光や風力発電と異なり、日々安定的に発電できます。天候に左右されることなく、昼夜も関係ありません。そのため、ベースロード電源としての役割も期待されています。

純国産エネルギーとしての強み

日本は地熱資源が豊富なため、地熱発電では燃料を輸入に頼る必要がありません。エネルギー自給率の向上や、国際情勢に左右されない安定供給が可能となります。

余熱・蒸気の多用途活用

発電に使ったあとの蒸気や温水(余熱)は、温浴施設や農業用温室、魚の養殖、暖房など多様な用途に再利用できます。これにより、地域経済の活性化や観光資源の創出にもつながります。

地熱発電のデメリット

メリットの多い地熱発電ですが、デメリットも存在します。ここでは、地熱発電にはどのようなデメリットがあるのか、その詳細を解説していきます。

初期投資と開発リスク

地熱発電所の建設には、地質調査や掘削など多額の初期投資が必要です。さらに、掘削した井戸が必ずしも十分な蒸気を得られるとは限らず、開発リスクが高い点も課題です。調査から運転開始まで10年以上かかる場合もあります。

環境や地域への影響

日本の地熱資源は温泉地や国立公園と重なることが多く、開発には自然環境や景観への配慮、地域の住民・温泉事業者との調整が不可欠です。法律による開発規制や、地域の理解不足も普及の障壁となっています。

立地条件

地熱発電は、地熱流体が豊富な地層が必要で、火山地帯や温泉地など特定の地域に立地が限定されます。全国どこでも導入できるわけではないため、普及拡大には地理的な制約があります。

エネルギー変換効率

地熱発電のエネルギー変換効率は、他の発電方式と比べてやや低い傾向があります。その変換効率は約8%程度で、風力発電の半分以下、水力発電と比べると10分の1程度です。

メーカーや種類によって異なりますが、一般的な太陽光発電の15~20%と比較してもやや劣ります。特に低温資源を利用する場合は効率が下がりやすく、発電量の最大化には課題も多いのが実情です。

地熱発電は環境に優しいエネルギー

地熱発電はCO₂排出が少なく、天候や昼夜に左右されず安定供給でき、クリーンで持続的な再生可能エネルギーです。世界有数の地熱資源を持ちながら、日本での普及率はそれほど高くありません。しかし、エネルギー自給率の向上や地方創生、脱炭素社会の実現に向けて今後の拡大が期待されています。

一方で、初期投資や開発リスク、環境・地域への影響、立地条件などの課題も多く存在します。しかし、これらの課題を乗り越え、地熱発電を活用することは、持続可能な社会の実現に大きく貢献するでしょう。

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    エネワンでんき編集部

  • エネワンでんき編集部は、電気代の見直しや節約の工夫、電力会社の選び方など、暮らしに役立つエネルギー情報をわかりやすく丁寧に発信し、日々の生活に寄り添う情報をお届けします。

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